華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
二人は閉められたドアの前で立ち尽くした。
エリカは楓の母親のあまりの対応に驚きを隠せない。
楓は分かっていたことだ、と思いながらもショックを受けていた。
「…楓?」
そんな二人に、後ろから声がかけられた。
涙をこらえて肩を震わせる楓の代わりにエリカが振り返った。
「あなた…誰ですか?」
怪訝そうにエリカを見て尋ねるその若い女。
「道成という者です。
失礼ですが、楓のお知り合いですか?」
エリカもはっきりとした口調でそう尋ねた。
すると、
「私、楓の姉です。
あなたこそ…楓の何なんですか?
もしかしてまた警察?」
エリカは言葉を発せなかった。
ここでやっと楓は振り返り、姉の姿を見た。
楓は久しぶりに見た姉の姿に驚いた。
頬には引っ掻いたような傷。
首筋には殴られたような痣と傷。
「お姉さん……」