華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
暗くなるまえにここを離れないとヤバい
なんとなく、楓はそう思った。
走りすぎてガクガクする膝を必死に抑えながら、楓は繁華街から離れた。
俯いたまま歩いていると。
ドンッ
肩が誰かにぶつかった。
「いってーなぁ……」
ぶつかった相手は、体格のいいいかつい男。
眉はほとんどなく、下唇にピアスがついている。
「おいガキ…てめぇ人にぶつかっておいて謝罪の一言もないんか?」
二十代前半に見える男は凄みながら楓に近づいた。
楓は息も整い、でも心は悲しみにくれたままで。
エリカに出ていけと言われたことがショックでもうどうにでもなれ、と自暴自棄になっていた。