華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
女嫌い 楓
侑希side
バタン……
私は家のドアを閉めた。
正直、どうやってここに帰ってきたのかわからない。
そもそも、この家に入ったのは二度目だし。
家、と呼べるほどここにいた訳じゃない。
ただ、マスターの命令を遂行するために用意されたものだから…
いまはここが私の”家”。
ドクン…ドクン…
やっと一人になったのに私の心臓はまだ大きく波打っている。
…あのとき、私はどうしても動揺を隠せなかった。
あの男は無意識に呟いた様子だったのに…
それが分かったのに…
反応してしまった。
なぜ?
なぜ彼が知っているのか?
私の頭の中はそれしか考えられない。