華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
「行ってくる……」
ふと楓が顔を上げた先には見慣れたマンション。
ゆっくとそこへ足を踏み入れた。
ガチャ…
「…ただいま」
楓は何と言えば良いか分からず、とりあえずそう言った。
なにも声がしないままリビングへ行くと、人影が見えた。
楓の心臓はばくばくと音をたて、今にも体から飛び出してきそうな勢いだ。
リビングのドアの前で深い深呼吸をし、リビングのドアノブに手をかけ、重たい扉を開けた。
「……あ…………。」
「…………!」
楓を見たときのエリカの表情。
楓はずっと忘れられない。