華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
そんな、ある日。
中二も終わりかけの、寒い冬のある日だった。
楓はいつものように、蓮と自分の分の朝食を作っていた。
カランッ
「あっ……」
手から玉杓子が滑り落ち、それを拾おうと屈む。
“……かえで………”
ふと、誰かに呼ばれた気がした。
なんとなく女の人の声のような気がして、柄にもなく心臓がバクバクと音を立てた。
楓は周りに誰も居ないことを確認し、気のせいだと思うことにした。
そんなはずはない、と自分に言い聞かせた。