華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
楓の頬を、涙が伝った。
〔あたし楓に言っとかなきゃいけないことがあるの。聞いてくれる?〕
「うん…。」
急に改まったエリカに胸がざわつきながらも返事をする。
〔あのね、あたしがもしも死んだらあたしの遺産は全部楓にいくようになってるの。〕
〔貯金も、マンションも全部。〕
何、それ。
〔だから、楓はちゃんと幸せになって?〕
エリカは…?
〔……ばいばい、楓。〕
「ちょっ…」
ピッ
プーップーップーッ…
電話が切れて電子音が鳴る。
慌ててかけ直しても――
〔ただ今おかけになった電話は……〕
機械的な声がするだけ。