華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
エリカの手紙には水が染みた跡がいっぱいあって、泣きながらこの手紙を書いたんだと楓には分かった。
楓は、信じたくなかったエリカが死んだという事実を受け入れなくちゃいけないと思った。
同時に、こんな思いをするくらいならもう誰も信じたくない。
誰も信じない、と思って。
でも、いつも行動をともにするみんなは信じられるのかな…などと思った。
「楓、泣くな。な?」
「………蓮。」
頭にポンと手を乗せ、微笑んでいる蓮。
楓はやっぱり蓮が好きだ、と思いながら涙を拭った。
「今日はマンションに行く。鍵はあるから。蓮もついて来て?」
そうして二人はマンションに行き、テーブルに置かれた通帳を取り、マンションの所有権に関する書類などをしまった。
「楓はここに住むのか?」
「ううん。今はまだ、ね。」
一人でここにいることは出来ない。
だからとりあえず家の掃除をし、簡単に片付けた。
エリカの部屋には何も物がなく、ベッドだけが置かれていて。
楓の部屋はもとのままだった。
ゴウはここには住んではいなかったのだろう。