華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
「何もねぇな、ここ。」
そう言われて、部屋を見渡す。
確かに何もない。
広いリビングに、3つのソファ。
その中でも使うのは私が座ってる1つだけ。
それらのソファの真ん中にテーブル。
フローリングの床は冷たい。
何が入っているかも知らない棚も他の部屋に繋がる扉も、全部が黒。
もちろんソファも。
ただ、窓の淵だけがグレー。
テレビはない。
あっても、ただの飾りに過ぎないし。
「何も使わないからいらないのよ。」
私はコーヒーのカップを置き、そう呟く。
ここは、寝るためだけの家だし。
「いらない、か…。」
どこか遠くを見ながら言った蓮士。
一体、何を考えるんだろう。