華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
「はああ……」
男が、溜め息をついた。
「溜め息ついたら幸せが逃げるのよ。」
私は親切に、教えてあげた。
「てめぇもついてたじゃねぇか。」
…よく喋るなあ。
まあ今のは私が話し掛けたも同然か。
「私はいいのよ。」
「なんでだよ。」
「逃げる幸せも持ってないわ。」
そう言った私に、怪訝そうな目を向けるその男。
「てめぇ、名前は?」
「それが人に名前を聞く態度?それに、自分から名乗るのが礼儀じゃないの?」
そう言った私を睨みながらも、男は口を開いた。
「鈴堂楓。………楓でいい。」
鈴堂楓。
こいつも桜華の幹部…。
昨日調べた中の一人。
「私は栗栖侑希。私のことも侑希でいいわ。」