華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
壁に寄り添ってはいても、コンクリートで反射された光が視界に入ってくる。
私は、膝に顔を埋めるようにして完璧に視界を遮った。
すると、急に大きな影が出来るのが見えた。
「これで大丈夫だろ?」
目を挙げた私が見たのは、優しく微笑みながら立っている楓の姿だった。
私は、楓が立っていることを申し訳なく思いながらも
「ありがとう。」
と言い、影を作ってもらった。
私は、あまり優しくされたことなんてないから、少しくすぐったいような気がする。
だから再び、顔を膝に埋めた。
楓は何も言わず、ただじっと、私を見ていた。
私はその居心地のいい空間に、うとうとと眠気を誘われ、浅い眠りに落ちた。