華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
「ちょっと!」
私はそれ以外言えない。
この腕を振り払うことなんてたやすい。
…だけど。
楓から伝わる尋常じゃない震えが私をそうさせない。
楓はやっぱり、女の人に触れるのが怖いんだ。
なんだか改めて思った。
私なら平気だって言ったけど、この震えは平気とは思えない。
そうまでして私を連れて行こうとしている。
それが、私を完璧に拒否することを許さなかった。
「楓。手を離して。着いていくから。」
私から他人を思いやった言葉が出たことに、自分で少し驚いた。