華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
「ふふ。私ね、鋭い人って好きよ。
だって、面倒なこと説明しなくていいじゃない?
栗栖侑希は偽名よ。」
嘉は私の言葉を聞いて、辛そうな顔をした。
嘉が知ろうとしたことなのに。
「どうしたの?聞きたくなかったって顔ね。
嘉は、知ろうと思って調べたんでしょう?」
ああ、止まらない。
私は自分がイライラしていたことに気がついた。
マスターによく言われた。
“機嫌が悪くなるとよく話すね”
って。
自分では機嫌が悪くなってることには気付かないから、こうならないと分からない。
やっぱり私はどこかが壊れているんだ。
「知りたかったんでしょ?
それを今知れたんでしょ。
だったらそんな顔しないでよ。
私が悪いの?
本当のこと言わないほうがよかった?
ねぇ。答えてよ。」
嘉は、突然ねじが外れたように話し出した私に困惑している。
そりゃそうよね。
無表情で、抑揚のない声で話して。
機嫌が悪いことになんて気付く訳がない。