月光御伽
「何してんの、押さえてよ!!」
葉月の怒鳴り声で我にかえった私は
同じく葉月の声を合図に延びてくる
無数の腕を無我夢中で払った。
けれど一つの腕に捕えられた瞬間
私の動作は止まってしまった。
「へぇ、そんな顔も出来るんだぁ。」
「あんたの秘密、本当だったんだね。」
私を掴む男が厭らしく笑い葉月は満足そうだった。
「動いたら目、傷付いちゃうからね。」
なんでこんなことに。
私が何をしたって言うの。
誰か助けて。
お父さん…お母さん。
匠…。
駄目だ。匠は馬鹿だから
こいつらみんな殺しかねない。
私があいつの日常を壊しちゃいけない。
近付く指に目を閉じることさえ
私には出来なかった。
その時私の目に写ったのは
絶望と孤独だった。