月光御伽
「朝妃!?」
ドアが壊れたような激しい音と
同時に聞こえたのは
私のよく知る馬鹿の怒声だった。
『…た、くみ。』
葉月達もいきなりの匠の登場に
唖然としていて、次第に顔が蒼くなっていった。
誰ひとり匠から目を離せない。
「てめぇら、覚悟出来てんだろーなぁ!!」
鬼のような形相の匠が一番近くにいた
男子の胸ぐらを掴み放り投げた。
駄目だ、こいつ殺しかねない…。
『匠、やめろ!!』
「朝妃は黙ってろ!!」
匠の怒声に葉月達はびびりまくって
声も出ない。
私は上手く足に力が入らない。
『あんた達逃げなさいよ!殺されるわよ!!』
「馬鹿野郎、ぶち殺すんだよ!!」
『馬鹿なこと言ってんじゃないわよ!!』
怒鳴り合ってる間に匠は
また男子に近付き殴り掛かる。
見境の無くなった匠は本気で危ない。
このままじゃ匠が悪くなってしまう。
『駄目っ、匠ぃ!!!』