月光御伽


私の放った言葉に匠はひどく
辛そうな表情になってしまった。
でも私はそれに、どうこうする余裕が無い。
それでも匠は私に歩み寄った。


「朝妃、送る。」

帰るぞと私の腕を掴んだその掌を
私は拒んだ。

『触るな。』
「…朝妃。」

『うるさい。一人になりたいの。』
「そうかよ。勝手にしろ。付き合ってらんねえよ。」
匠を見ずに言った私に
匠は私を見放すように
鋭く言い放った。



匠は初めて私に背を向けた。
今までずっと、私が匠に背を向けるまで
必ず私を見てくれてた匠が
今、初めて…。



一人じゃなくて"独り"になった瞬間だった─…




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