月光御伽
「へぇ~意外に可愛いじゃん~」
「え、綺麗系じゃね~?」
なんてどうでも良いことを
馬鹿みたいな口調で
勝手に盛り上がってる彼らに
『邪魔よ。どいて。』
と一言発したら空気ががりと変わる。
「いつも思うけど、お前も喧嘩売るよな。」
匠わ呆れた様子で私の肩に寄り掛かった。
「で、お前らどけよ。水戸黄門始まんだろーがよ。」
大概あんたも喧嘩売ってるわよ。
彼らは少し苛ついてるみたいだけど
またヘラヘラと笑って応対する。
「まあまあカリカリすんなよ。」
「俺達、朝妃ちゃんの噂確か─…」
喋っていた男が視界から消えて
ゴッと鈍い音と共に匠が視界に現れた。
「てめぇ、それ以上舐めたこと抜かすとぶん殴るぞ。」
『匠!!』
もう殴ってるじゃない!!
「てめぇー!!」
彼らは流石にヘラヘラせず
殺気だって匠に拳を向ける。
『た、匠っ。危な…』
もみくちゃの中、匠を探すが
すぐにその必要は無くなった。
立っているのは匠だけ。
そのまわりに転がっている馬鹿。
「ぼけっとすんな。帰るぞ。」
『あんた、人間じゃないわよ。』
「俺は最近人間になったんだっつってんだろ。」
そんなやり取りをしながら
校門をくぐった。
気弱なクラスメイトわ腰を抜かしていた。