cross-----桜色の時間軸。
2.決断
あの少年の青く澄んだ瞳の色が
忘れられないでいた。
あの日から一週間。
おかしなことが起こったのはあ
の日だけで、また元の生活に後
戻りしてしまっている。
いつもどうりに私は帰りの道を
歩いている。
一つ違う事といえば、泰葉が風
邪で休んでいる事ぐらい。
帰り道の脇にある小さな公園の
横を通ろうとした時だった。
風に揺れる長い黒髪。
後姿だがすぐに分かった。彼だ
と・・
彼は下を向きながら何かブツブ
ツ言っているようだった。
「浮宮さん?」
私は恐る恐る彼に近づき、声を
かけた。
その瞬間彼の青く澄んだ目は、
真っ赤な濃紅に変わり、怒りの
表情が見て取れた。
「どうしたんですか!?」
「あっあぁ。千代さんですか」
私が見えていなかったのだろう
か、声に気付いた彼の瞳はいつ
もどうりに戻って表情も穏やか
になっていた。