「I Love You」をキミにー秘密のオフィスラブー

休憩室から従業員出口へと俯きながら走った。


途中何人かの社員とすれ違ったけど、そんなこと気にする余裕もなかった。


ただ、早く逃げ出したかった。


心の中はグチャグチャ。赤坂さんがモテることは分かっていたけど、あんな光景見たくなかった。


流れ落ちる涙を拭きながら従業員出口を飛び出した時だった。



「待てって!!」



突然、腕を掴まれたと想うと、そのまま勢いよく引っ張られた。


ギュッと抱きしめられた体。



「待てって…言ってるだろう…」


聞き慣れた大好きな人の声。愛おしそうにあたしの髪を撫でるその男らしく太く優しい指先。


「あかさか…さん…」


あったかい胸に押し当てられた耳をすますとドクンドクンと小刻みに波打つ鼓動にまた1つ涙がこぼれ落ちた。



< 257 / 372 >

この作品をシェア

pagetop