「I Love You」をキミにー秘密のオフィスラブー
【誠side】
それは何かの間違いだと思った。
きっと何かの悪い冗談だと…思いたかった…。
ライトアップされた桜の花びらの、儚い美しさに心を奪われ見惚れている俺の耳に聞こえてきた彼女の言葉に
「冗談…だよな…?」
そう聞き返した俺に彼女は目を逸らすことなくこう告げた。
「うぅん。本気だよ。あたしと…別れてください」
「…えっ?どうして…?」
夜風に舞った花びらが、彼女の髪に悲しげにとまる。
その花びらを取ろうと近寄る俺から避けるように後ろに下がる沙織。
「なんで…?そんなこと言うんだ?ずっと仕事でデートできなかったからか?それなら謝るよ。寂しい想いさせてごめん」
「違う、そうじゃない」
「久しぶりのデートに夜桜見にきたのがいけなかったか?寒くて風邪ひかせたか?」
「うぅん。そうじゃないよ」
首を横に振る彼女の心が見えなくて、俺はただ、思いつく言葉を並べることしかできなかった。