「I Love You」をキミにー秘密のオフィスラブー
「沙織?」
何も答えられないまま俯くことしかできない。
「違うのか?」
「………」
「沙織?お前-…なんで何も言わないんだよ?」
「ごめん。カズくん。もう帰って。お願い」
あたしは答える代わりにそう呟いた。
納得のいかない表情のカズくんに、もう一度帰ってと告げた。
体がブルブルと震え、シーツをキツク握りしめても体の震えは止まらなかった。
「お願い。帰って」
震える声でそう言うと「───分かった」と立ち上がり、困ったことが起きたら連絡してくれと丸椅子に名刺を一枚置いて病室を後にした。
ごめん。言えない。言えるはずがない。
このお腹の子供の父親が誰か分からないなんてー…そんなこと…言えないよ…。
1人ぼっちになった空間は悲しいぐらいに広すぎて…孤独で壊れそうな心は震え、握りしめたシーツには幾つもの涙の跡が滲んでいた。