「I Love You」をキミにー秘密のオフィスラブー

この人…真剣なんだ…。早咲さんの想いが怖いぐらいに伝わってきた。


この人に、あたしも自分の気持ちをちゃんと伝えなきゃ。

「分かりました」


そう返事をした。瞬間、ホッと安堵の表情を浮かべた早咲さんは、まるで子供みたいに「よかったぁー」と目を細めて笑った。



その笑顔が一瞬だけ可愛いと思った。

ほんの一瞬だけ…。

同時に、この人を傷つけてしまうであろう自分の感情に戸惑いを感じた。



早咲さんと向かい合って自分の気持ちを伝えることを決めた。


あたしの判断は正しかったのか自分でもよく分からない。

“あたしが好きなのはあなたじゃないです”


なんて言葉を、この人に言えるの?


こんなに自分の気持ちを真っ直ぐにあたしにぶつけてくれた人は早咲さんが初めてだった。


この人を傷つけてまでして…彼女がいる赤坂さんを好きなままでいて…あたしは、それでいいのだろうか?



今も微笑みを浮かべて優しい瞳を向ける早咲さんを見ながら、そんな感情が心に暗い影を落とした。



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