「I Love You」をキミにー秘密のオフィスラブー
今の俺に…彼女を好きだと言う資格はないよな…。
本当は、今にも喉の奥から出そうになっていたんだ。
「君が好き」だって。
言ってしまえば楽になれたのに。だけどそれは単なる楽になりたいという自分のエゴで、今、彼女に俺の気持ちを伝えることは彼女を混乱させる行為。
そして、理沙に対して単なる裏切りでしかない。
まぁ…もうすでに理沙以外の女性に心を奪われた俺の行為は単なる裏切りでしかないのだけどな…。
理沙との待ち合わせまであと30分余り…。
駐車場に停めてある自分の車に乗り込んで、煙草に火をつけた。
車の中に儚げに消えていく煙草の煙。
少しだけ吸って携帯用の灰皿に煙草の火を押し付けた。
心がざわつく。いいようもない緊張と胸の痛みが襲いかかる。
もう一本、煙草に火をつけてスゥーと深く吸ってみる。
普段なら煙草を吸えば落ち着くはずの心が、今は一向に落ち着かないよ…。
これから理沙を傷つけにいく。
この事実の重さに押しつぶされそうになりながら、ゆっくりとアクセルを踏んで車を走らせた。
あの待ち合わせのカフェへと…。