「I Love You」をキミにー秘密のオフィスラブー

─────数分後、待ち合わせの時間155分程早く『SOYOGI』に着いた。


ここに来るのはいつぐらいぶりだろうか…。

理沙と付き合い始めた頃は、ここで待ち合わせしてよく色んな話をした。

あの頃と何も変わらない洋風造り外観。

重みのあるドアを開けると聴こえてきた洋楽のオルゴールの音色に、あの頃の自分がタイムスリップして脳裏に蘇る。



ここで理沙に好きだと言った。


なのに、きょうは別れようと言おうとしている。



なんて理不尽で自分勝手な心なんだ…。

自分がこんな人間だったなんて…。


何一つ変わらない店内を歩きながら「こちらへどうぞ」と顔見知りになっていたマスターから案内された場所には


「理沙…」



あの頃と同じように、変わらない微笑みで「誠」と呼ぶ、理沙の姿があった。



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