漆黒の姫君
「その一。私のことは、何処のどいつから聞いたのかしら?」


「・・・其処から言わないといけない?」


「当たり前でしょ。答えなさい」


アリスは、殺気のこもった眼でソラを見た。


「・・・ロヴェ様からだ」


「ロヴェ?」


聞き覚えのない名前・・・。


「その二。ロヴェとは一体誰のことかしら?」


「・・・ロヴェ様の正体は、誰も知らない。俺は只、彼に聞いただけだ」


「私のことを?」


「ああ」


アリスはしばらく黙った。


『これじゃあ、何も解らないわ・・・。私の力のことも・・・それから・・・』


アリスは俊介をチラッと見た。落ち着かない様子だ。


『彼のことも・・・ね』


「とにかく何もわからない・・・」


ソラが口を開いた。


「さっきまでの大胆な貴方はどちらに行かれたのかしら?」


アリスが聞いた。さっきのキスのことを根に持っているようだ。


「大胆?」


「コイツ。私にキスした」


「なっ・・・!」


俊介は、顔を真っ赤にさせた。


「別に気にするなよ~王子様。アレは只のスキンシップだって~」


ソラがとぼけた様に言った。


「だって、キスッて・・・!」


「私、かなり嫌だったんだけど」


アリスが言い放つ。その視線は・・・冷たい。


「それは謝るよ。すまなかった」


「・・・」


アリスは冷たい視線のまま、沈黙していた。


ポニーテールの髪の毛が、不機嫌に揺れる。


「・・・質問なんですけど・・・」


俊介が遠慮がちに聞いた。


アリスとソラが、一斉に此方を向く。


「僕がアリスと力を使えたのは・・・何ででしょうか・・・」


俊介が言う。


「・・・それは私も気になってた」


アリスが俊介の意見に、初めて賛成した。


「そんなこと、俺に聞くなよ。俺だって、何かわかんなかったし」


「・・・これ以上話しても、何も解決しなさそうね・・・。いいわ、私のことを話してあげる」


俊介とソラは、ゴクリと唾液を呑み込んだ。


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