漆黒の姫君
―Ⅰ―

私の名前

「君・・・。大丈夫ですか?」


「ん・・・?」


目を開けた時に、最初に目に入ったのは一人の少年だった。


しかし、焦点がはっきりせず、思わず目を細めた。


「ココは・・・?」


「ココ?ココは、桜丘の上。僕しか知らないはずなのに・・・。というか、傷だらけですね。大丈夫・・・?」


「!」


アリスはハッとした。


『私は確か・・・。あの後・・・』


起きるときに感じる痛みを我慢しながら、周りをクルリと見渡す。


見覚えのない世界―――――。


「今・・・。西暦何年?」


「え?」


「だからっ!今、何年だって聞いてるの!」


アリスは焦って聞いた。この景色に見覚えがなく、不安が高まってきた。


「えっと・・・今日は西暦2010年5月18日だけど・・・」


「はぁ!?」


アリスが驚くのも、無理はない。


理由は、アリスが塔から落ちて、既に五百年の月日が経過していたからだ。



「一体、どうしたんですか?その傷。あと、その格好」


「え?」



アリスは、自分の姿を見た。


服はあの時のまま。傷だらけで、腕の付け根が、ハンカチで縛られていた。


「これは・・・」


「あ、何か怪我して、血が出てたから、手当てした。痛みはないようですね」


「ふーん・・・。ま、一応お礼は言っておくわ。ありがとう」


「別にいいよ。で、僕の質問の答えは?」


「質問・・・?」



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