漆黒の姫君
しばらくすると、叔父が大量のチラシを手に、戻ってきた。


「やあ~。お待たせ、城崎さん」


「いえ」


アリスはそれだけ答えると、目の前に置かれた、物件のチラシを手に取った。


「とりあえず、白銀高校に近い所のマンションのチラシだ。価格は、高いところで3000万円。安いところで500万円というところだ」


3000万円・・・か。


私が今、手にしているのは500億円。


いや、それ以上になる可能性だってある。


500年前の、珍しい金品なのだから。


「此処でいいわ」


「「え?」」


叔父と俊介が、声を揃えて言った。


「お金は、大丈夫なのかい?」


「はい。心配は要りません」


アリスははっきりと言った。


「じゃあ・・・。君が良いって言うなら、此処の手続きをとろう。私がやってあげよう」


「ありがとうございます」


アリスと俊介は、不動産から出た。


「待って、何処に・・・」


「此処らへんに、鑑定するところ、貴方、知らない?」


「鑑定?」


「そう。私が持っている物を、鑑定してもらうの。そして、お金に変える」


「・・・わかった。あっちにあるから、案内するよ」


「助かるわ」


俊介とアリスは、近くの鑑定屋に歩いて向かった。


「ねぇ、アリス。思ったんだけど」


「・・・何?」


アリスの迫力に、俊介が肩を、少しすくめた。


「僕のこと、シュウって呼んでくれないよね」


「はぁ?」


そんなことを、コイツは考えていたのか。


アリスは、深くため息をついた。


「名前で呼ぶのが面倒くさいからよ。いくらシュウって呼ぶと私が決めたからといって、呼ぶとは限らないから」


「ゴメン。何か、気になって」


いつもこうなのかしら。この人って。


アリスは、そのことを口に出そうとしたが、やめた。


後々、面倒くさいことになりかねない。


「此処だけど」


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