漆黒の姫君
そう言って、俊介が指さしたのは、質屋。


「此処?」


「そう。多分、十分くらいで終わるだろうから、僕、待っておくよ」


「・・・勝手にして」


アリスは、そう言い放つと、中へ入って行った。



しばらく俊介が、待っていると、中からアリスが出てきた。


「アリス。終わった?」


「ええ。見ればわかるでしょ?」


アリスの態度は、相変わらず冷たい。


「どうだった?」


「一生、遊んで暮らせるほど。そんなに珍しいものなのかしら?」


「す・・・すごいね」


アリスはパーカーを翻すと、歩きはじめた。


「次は何処に?」


「決まってるでしょ?服を買いに行くのよ」


「あぁ。服」


「大体この服、貴方のだし。男物の服なんて、着たくないの」


「ゴ、ゴメン」


俊介が謝ると、アリスはムスッとしたまま、近くの店へと入って行った。


「いらっしゃいませ」


女の人が、出迎える。


「服。自分で選ぶコト、出来ないので、全身コーディネートしてください」


「え?・・・はっ、はい!かしこまりました」


「アリスって、本当、面倒くさがりだね」


「うるさい。黙ってくれないかしら」


「ゴメン」


「貴方、さっきから謝り過ぎ。逆に、うっとおしいわ」


「ゴメ・・・」


謝りかけた、俊介を、アリスがキッと睨んだ。


「こちらはどうでしょう?」


その時、店員が服を持ってきた。


「こちらは、春の新作です。華やかで、いいですよ」


「試着室、借りていいですか」


「どうぞ。此方です」


アリスは、そのまま試着室へと入って行った。



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