無能力者の空模様(スカイカラー)
「あー、セイラン先輩!」


ふと不機嫌なセイランを呼ぶ、聞き慣れた高く元気な声。

セイランはそれを躊躇うことなく華麗にスルー。


「ちょっと! 待ってくださいよ!」


声は少し遠くから聞こえてくるのに、セイランの体は何かにドンッと押された。

まるで空気の塊が背中を押したかのように――。


「次無視したら、20メートルぐらいぶっ飛ばしますよー!」

「うわわわわ! ちょ、武力行使かよ!」


慌てて振り向いたセイランの前には、長い黒髪をなびかせた制服姿の少女。


その制服の袖には、Aと書かれている。


「どうもお馴染み雨下朱里(あました あかり)、参上です!」

その幼ささえ残る容姿を見る限り、それほど高ランクの超能力者には見えない。


が、そんな先入観はこの島では通用しなかった。
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