新撰組~変えてやる!!
「…そう言えば歳は何をもらったんだ?歳にも、あったのだろう?」
「あ、それ、俺も気になります!」
葵と近藤は入り口に突っ立っている土方に視線を移した。山南が外に出て行く。
「…携帯用の筆だ。ったく、粋な真似をしてくれるぜ…」
「そう言う割には、嬉しそうですね。」
土方は“そうかもな”とだけ呟いた。
「そうだ、近藤さん…山崎が熱、出したから明日は休ませようと思ってんだが、いいか?」
「もちろんだ。任せたぞ、歳!!」
葵は、自分宛てに書かれた手紙を見つめた。近藤が部屋から出ていき、しばらくしてから、山南が水の入った桶と手拭いをその手に携えて戻ってきた。
「…山崎君は、風邪かい?取り敢えず、これを乗せておいたらいいだろう。」
山南は手拭いを水に浸し、ギュッと絞ってから葵に渡した。
「山南副長、ありがとうございます。」
「これくらいどうと言うこともないよ。そうだ。土方君、そろそろ皆が帰ってくる頃だね?」
山南は確かめるように言った。土方はそれに軽く頷き、未だに降り続ける雨を眺めていた。
「ならば、私はこれで失礼するよ。皆、雨に濡れて冷えているだろうし、飴湯でも用意しておくよ。」
「はい!!わざわざ、ありがとうございました!」
丁寧に頭を下げた葵に、山南は仏のような笑みをひとつ見せて、去っていった。
「……土方副長…俺、迷っていることがあるんです。…聞いて、もらえますか?」
「……おぅ…」
葵は、土方が小さく返事したのを聞いてから土方に視線を移した。土方は、葵の表情から何かを読み取ったのか、襖を閉めてから葵の目の前に座った。
「…俺は、ご存知の通り、未来から来ました。つまり、今、俺がいるこの時代のことも全て…とまではいきませんが、知っています。“私”のいた時代では、新見副長や芹沢局長の死に方はもっと違うんです。」
土方は少し目を見開いた。
「…新見副長は局中法度により“切腹”にて死亡。芹沢局長は、長州の仕業に見せかけて、土方副長や山南副長、沖田さん、左之の4人で殺害。同時に、お梅さんや平山さんも殺した、と伝わっています。」