新撰組~変えてやる!!
•3 白昼夢
何もしないまま、昼になっていた。山崎はまだ目覚めないものの、熱も下がり、顔色も良くなっている。降り続いていた雨も上がり、所々に水たまりはあるが外を歩く分には問題はないだろう。
「…………」
今頃になって芹沢を、自分の手で殺したのだと、自覚する。気づけば、手が震えている。途端に、自分が嫌になる。両親が死んだ時も、その事実を受け入れるまでに随分と時間がかかった。
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両親が死んだ時、葵はまだ6歳の少女だった。剣道好きな父と母に連れられ、大きな公園に行った帰り道のこと。まだ暑さの残る季節だった。突然に、その事故が起きたのだ。あの日の恐怖は、一生忘れることはないだろう。轟々と燃える炎、止まることなく流れ続ける血、何よりもつい先程まで生きていたはずの人が死んでいるという事実。全てが敵に見えた。
目覚めた時には、病院の一室にいた。隣には自身と同じく、ベットに寝かされている母。ただ、自分と違うのは、母がたくさんの機械に繋がれていたこと。父は即死だったと、後で兄から聞かされた。兄は2人ともほぼ無傷だったが、葵には右肩にその時の傷がまだ残っている。
葵達兄弟は、父方の親戚を転々と回った。けれど向けられる視線は冷たく、徐々に心を閉ざしてしまった。母は2年後に、目覚めることなく、死んだ。駆けつけた時にはすでに冷たくて、母の手を握って泣いた。
その時に葵の手を包んでくれた兄の暖かい手は冷え切った心まで温めてくれているようで、人目も憚らずに泣いたのはよく覚えていることだ。
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「………んぁ?…ね、寝てた!?」
葵は、突然飛び起きた。目尻の辺りには涙が溜まっていた。
「…ほーんま、よう寝とったわ~…おはよーさん、葵♪」
「…すす、む…!?いつ起きたの!?」
山崎は不気味なほどにニッコリと笑った。
「ついさっきや。可愛い寝顔やったで、葵~♪得したわ~♪」
「…わ、忘れてください…」
葵は赤くなっている顔をうつむかせ、逃げ道を探すように目を泳がせた。