新撰組~変えてやる!!
「兄さ…!!」
葵は、いるはずのない兄の姿にすがりつくように手を伸ばしていた。息が荒い。会えない事実を、再び突きつけられたようで葵はそれを忘れるように、両腕を目元にやった。
「…ただの……夢、だ…。」
「……起きたか?うなされていたようだが…」
葵はいきなり隣から聞こえた声に驚き、首をそちらに向けた。
「…土方副長…、俺は何故こんな場所にいるんですか?」
「おめぇが縁側で寝てっから、俺の部屋に運んだ。昨日なんかと比べっと、まだ今日はあったけぇが、それでも寒くなってきてる。風邪引くぞ?」
葵は“はい。”とだけ答え、少し開いている襖から見える景色を眺めた。
「もう、暗くなってきてますね…。」
「…そうだな……。」
土方は、大して興味もなさそうに返事をした。
「明日は芹沢さん達の葬儀がある。全員に、出席義務がある。必ず、出席するんだぞ。いいな?」
「…は~い………」
葵は自信の右肩に手を乗せた。そこには両親が亡くなった時に負った傷がある。“自分はまた何も出来ずに、ただ見送ることしか出来ない。”その気持ちは葵の心に、深くえぐったような傷を残していく。
「……これで、良かった……」
葵は、自分に言い聞かせるように呟いてから、誰もいない自室へと戻って行ったのだった。