新撰組~変えてやる!!
今ここで晒しだけの姿になれば、あの事故の時に負った傷が見えるだろう…。
“どうか、嫌わないで……”
「……わかった。」
着物が擦れる音、落ちる音がやけに耳障りな音に聞こえる。
「…っ!?葵!!その傷…!!」
「うん。幼い頃のだよ。」
山崎は悲しそうに目を伏せる。
「そうか…話したないんやったらええ。話せるようになったら話しや。」
そういって、山崎は手を動かし始めた。
「帯は、蝶結びでええな。髪は…銀杏崩しでええか?」
「…任せる。」
山崎は何事も手際よくこなす。あっという間に着物の着付けが終わる。葵は、山崎が後ろを向いている間に、袴を脱いだ。
「よし。髪、すんで?」
「うん。」
山崎は手に持った櫛で、葵の髪をとかしていく。とかす必要がないくらいさらさらな髪は、男女問わず、羨ましく思うことだろう。
「よし、出来た。えっと、一応化粧もするか?葵は色白やからおしろいはいらんな。紅だけしとくか?」
「その方がいいの?」
山崎はしばらく唸ってから頷いた。
「じゃぁ、つける。」
「わかった。」
山崎は前に回り、真剣な表情で葵の顔を見つめた。山崎は手近にあった紅を取り、それを薬指につけた。そして水で溶かす。
「へぇ…この時代は、このまだ水で溶かすんだ…」
「そや。…葵、ジッとしときや。」
山崎はそのまま紅を、葵の唇に乗せた。人の指が唇にあたるというのは、なんとも不思議な気持ちになる。
「よし、出来た。鏡、見るか?」
「うん、見たい。」
山崎は奥から鏡を出してきて、葵に渡した。