新撰組~変えてやる!!

•5 優しさ


 「えっと…確か……ここ!!ここ右!」

 「…ほんまかいな…道迷ったとか後で言わんといてや~?」

 山崎は、心底居心地悪そうにキョロキョロと周りを見渡している。葵もジロジロと見られている気がして早足になっていた。

 「あ~…もっと早く歩きたいのに!!着物が重たい!」

 「そんなこと言われても…しゃあないやろ…少しは我慢しぃな……」

 山崎は大きな溜め息をつく。

 「いいでしょ…別に……お梅さ~ん!!葵です~!」

 葵は、ある一軒の家の前で声をあげた。続いてその戸が開く。

 「…葵…?…来てくれたんやね。ありがとう。入り…?」

 「では、お邪魔します。」

 葵は山崎を外で待たせ、中へと入った。

 「ええの?あの子、外で待たせて…」

 「いいんですよ…芹沢局長から手紙を預かっています。それと、これも…」

 葵は胸元からお梅宛ての手紙と小さな包みを出し、渡した。

 「芹沢はんから…」

 読み始めたお梅の目に、涙が溜まっていく。そして包みを開けた瞬間に、一筋溜まりに溜まった涙が流れた。お梅の手の中には、雫に芹沢が作らせたという梅をモチーフとした簪が握られていた。

 「芹沢はん…素直やないんやから…」

 梅はつけていた簪を取り、芹沢からの最後の贈り物となってしまった簪を代わりにつけた。櫛は以前芹沢が与えたものをつけている。

 「……では、これで失礼しますね。まだ行かなければならないところがありますから…。」

 「待って!!…どこ行くん?雫って人のところ?」

 葵は、まだ涙が溜まっている目を見つめた。その目には微塵の迷いもなく、ただ期待がこもっていた。

 「はい。彼女にも、手紙を預かっていますから。」

 「うちも、ついて行ってもええ?」

 葵はその質問に目を見開いた。


 
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