新撰組~変えてやる!!
•1 天才剣士
新撰組の局長 芹沢 鴨と副長 新見 錦の葬儀が行われて早くも数日が過ぎた。葵の昇格の件は“反対する者が出かねない”という土方の判断で隊士はもちろんのこと、隊長達にも話されていなかった。
「小宮さ~ん♪聞きました~?今日、土方さんからお話があるそうですよ~♪」
そう声を掛けてくるのは沖田 総司。剣の腕は確かなのだが、張り付けたような笑みが気に食わないと葵はいつも思っていた。
「沖田さん、何の話か聞いてます?というより、俺も呼ばれているんですか?」
「そ~ですよ?皆さん、もう集まってる時間じゃないですかね~…アハッ!!一緒に遅刻しましょうよ♪」
沖田はいつも通りの笑顔。葵はどんどんと青ざめていった。
「何言ってるんですか!?行きますよ!」
「え~…いいじゃありませんか~…少しくらい…」
横で駄々をこねる沖田を睨みつつ葵は土方の部屋へと走った。土方の部屋の前に来た。その瞬間に勢い良く音を立てて開く襖、頭をつかまれる感覚、途端に走る激痛に目の前にいる鬼の形相の土方。葵は、夢であってほしいと思った。
「そ~う~じ~、こ~み~や~…」
地を這うような低い声にビクッと情けないほどに体が跳ねた。
「何ですか?この手、放してくださいよね。大人気ないですよ~?」
沖田はいつもの調子を崩さない。
「うっせえ!!てめぇら、どこほっつき歩いてやがった!?」
「ごっ、ごめんなさい!!」
葵は反射的に謝った。頭の激痛が少し和らいだ気がした。
「小宮さん、どうしてあなたが謝るんですか?知らなかったから当然ですよ?」
沖田の言葉に頭を拘束していたものがなくなる。葵はいそいそと部屋の中に入り山南と近藤の後ろに隠れた。
「何もそんなに怖がらなくとも…」
山南は少し呆れたように小さく溜め息をついた。
「総司、お前は後でお仕置きだな。覚悟しとけよ。」
土方がそういった後、沖田の拘束もなくなった。
「よし、揃ったな。」
近藤が人当たりのいい笑みを浮かべた。葵は山南と近藤の間に半ば強制的に座らされた。
「今日より小宮を総隊長および隊士の剣術指導とする。異論はあるか?」
近藤の声に一人の手があがった。