新撰組~変えてやる!!
「こんなに楽しめるのは久しぶりです。私が本気になれる相手など、そうはいませんからね。次は…全力で行きますよ…」
「どうぞ…」
葵は再び構えた。沖田の目がギラギラと光る。
「次で終わりですよ。…少し名残惜しいですがね…」
「はてさて、終わるのはどちらでしょうかね。俺はあり得ませんから、沖田さんでしょうか…俺は負けませんよ。」
沖田の纏う空気が、再び変わった。肌を刺すような空気。初めて人を斬った時に感じたもの。
「……私が……負ける…?戯れ言をほざくのも、大概にしてくださいよ…」
「……なら、確かめましょう…。」
沖田は顔から、表情を消した。いつもはコロコロと変わるその顔に、恐ろしささえ覚えた。交わったのは、その直後。沖田の胴には葵の木刀。勝負は葵の勝ちだった。葵の左の頬をかすめた木刀は、そのままの位置で止まっていた。
「……俺の、勝ち。」
葵は沖田を見据えたまま言った。と、その瞬間、葵の首に沖田の手が掛かった。勢いが余り、葵は沖田に押し倒されるような形で床に押し付けられた。
「…っ…!?」
沖田は、殺気立ったままである。動かそうにも、葵の力では不可能だった。
「総司!!やめろ!」
永倉が叫び、近付いてくる。それに続くように、原田、藤堂、土方、斉藤が飛び出してくる。永倉と原田が沖田の腕を掴む。藤堂と斉藤が葵の首を締め付ける手を引き離した。沖田が土方に殴られている映像を最後に、葵の意識は途切れた。斉藤と藤堂の、必死で呼びかける声を聞きながら。
「あっ!!…っと、いけね…目ぇ覚めた。よね?大丈夫だった?痛い所とかない?」
目覚めて、一番初めに目にしたのはくりくりとした大きな目。もう聞き慣れた声が聞こえてきた。
「…平助…ここは?」
葵は左頬に触れた。そこには布の感触。不思議に思い、周りを見渡すと、原田に永倉。近藤、山南、土方、斉藤。幹部の殆どが揃っていた。皆、不思議な体勢で眠っていた。
「ここは、副長の隣の部屋。みんな、さっきまで起きてたんだけど、寝ちゃったんだ。」
「……ごめん…迷惑かけたね。運んでくれた人にお礼しなきゃ。重かっただろうしね。」