新撰組~変えてやる!!
•2 昇格
「そうか…」
「それよりも、沖田さんの方は大丈夫でしたか?俺、あんな強い人に出会ったの初めてですから、手加減できなくて…すみません。痣にならないといいのですが…」
葵は左頬をさすりながら言った。
「ああ。ケロッとしてやがった。あいつ昔は体弱かったらしいが今は大丈夫みてぇだな。あいつの体調の心配はしねぇよ。」
「副長………本当にそう思っているんですか?違いますよね?」
土方は怪訝な顔で葵の方を見た。
「……何が言いてぇんだ…?」
「そうですね…簡単に言いますと、常に周りに気を配れということです。落ち着いて聞いてくださいね。…“私”の時代では、彼が労咳<ロウガイ>だったと伝わっています。現段階では判断しかねますが、気をつけておくべきだと思います。」
葵は土方の目を見据え、言った。沖田は労咳、つまり肺結核で亡くなったとされている。労咳はこの時代では死病と言われている。すなわち対処法がない。土方は目を見開き、そのまま固まってしまった。
「しっかりしてくださいよ。まだ、そうと決まったわけではありません。それに、俺が来たことで歴史が変わっている。まだまだ、歴史は変わりますよ。」
「……ぉ~………」
葵は外に目を向けた。起きた時には少し明るかっただけの光が、強くなっている。
「…朝、ですか…?」
「ん?朝だろうな…ふぁ~……眠い…ったく…髪、括っとけよ。平助は何も言わなかったが、それじゃ女に見える。」
葵は腰の辺りまである髪を見つめた。
「…確かに、こんなに長いと女に見えますよね。……いっそ、肩くらいまで切ろうかなぁ…」
「…!?何故そうなる!?今は括るだけでいいだろーがぁ!!」
葵は土方が怒鳴ったことにビクッと肩を震わせた。今の声で、何人かは起きただろう。
「第一なぁっ!!俺だっておんなじくれぇ長さあんだよっ!!おめぇが切る必要、ねぇだろうがぁ!」
更にヒートアップした声にはじかれたように起きた人が数人。
「とっ、歳!?大声出してどうした?」
声を掛けてきたのは近藤だった。