新撰組~変えてやる!!
「うっせぇ!!勝っちゃんは黙ってろ!小宮!!もういっぺん言ってみな!」
「髪、切ろうかって言っただけじゃないですか!!副長こそなんです!?誰が女に見えるって!?もっかい言ってみろ!!このおっさん!!」
「何度でも言ってやらぁ!!女顔!ガキ!少し剣術がうめぇからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
「何を!?この鬼面が!山南副長を見習ってはどうなんですか!?鬼副長!」
「んなっ!!」
土方と葵の会話、もとい口喧嘩はますます勢いを加速させる。見かねた近藤がそれぞれの頭にゲンコツをくらわせた。
「「いだっ!!」」
土方と葵の声は、見事にハモった。いつか葵が芹沢に新見と仲良く受けたものよりも、かなり痛かった。葵は睨むように近藤の方を向いて、その彼の表情に固まった。
「歳…小宮君…そこまでにしようかなぁ…?全く…みっともないな…」
近藤の額には血管が浮き上がっている。葵は血が引いていくのを感じた。土方も珍しく青ざめている。葵の視界に入った皆も青ざめていた。
「ぁ……あ……」
葵は布団を握りしめた。親戚の家。高々と上げられた手。怒り狂ったように怒鳴る声。嫌な思い出ばかりが蘇ってくる。
「……こんな…つもりじゃない……どうして…局長に重なる…嫌だ…嫌!消えろ!!嫌だ!!……やめて…ください……」
葵は熱に浮かされたようにうわごとを言い続ける。明らかに様子のおかしくなった葵に土方が近付き、肩に触れようとした。
「触るなっ!!」
その手はパシッと小気味良い音をたててはじかれた。葵はハッと我にかえった。
「…っ!!ごめんなさい!」
葵はその場から逃げ出すように出て行った。その場に残された土方や近藤はただ呆然と葵の背を見送った。
「葵っ!!どうしたんだ?いきなり…」
「ぱっつぁん……何でもないよ。」
追いかけてきた永倉に、葵は左手首を右手で握り締め、答えた。
「…………話したく無いならいい。ただなっ、もっと俺らを頼れよ。何もかも、一人で抱え込む必要はないんだ!もっと頼ってくれよ。」