新撰組~変えてやる!!
•4 役職
「じゃあ、あの蕎麦屋に長州の人が出入りしているからって、女装して店員のふりまでしてたの?」
「せや。」
葵は数少ない荷物を纏めながら山崎の話に耳を傾けていた。
「…桝屋は調べたの?」
「桝屋?…いや、まずそないな店あったか?なんせ俺の体はひとつだけやからなぁ…ま、警戒はしとくわ。」
葵は纏めた荷物を持って立ち上がった。
「……葵がおらんようになると悲しなるなぁ…」
「会えないわけじゃないんだから、大丈夫だよ。それにもうすぐ仲間も増えるよ。じゃあ、また後でね。」
葵は山崎に微笑みかけてから、部屋を出た。向かう先は幹部が集まっているという土方の部屋だった。
「失礼します、副長。小宮 葵、只今参りました。」
「…入れ。」
葵は土方の言葉に素直に従った。
「よし、揃ったな。」
中に入り周りを見渡すと、珍しく井上がいた。
「芹沢さん達が亡くなったことで、この組は大きく変わっていくだろう。そこで、だ。少しこの組の編成をしなおそうと思う。まずこれに異論がある者はいるか?」
土方の声に反論する者はいなかった。それを確認した土方が口を開く。
「まずは新しい役職を3つ作ろうと思っている。1つ目は“総長”。これは副長の位よりも少し上の役職だ。2つ目は“諸士調役兼監察”。これは、敵の動向を探るためと、隊内の取締役だ。3つ目は皆が知るように“総隊長”だ。これは小宮になった。」
土方は一度近藤に視線を向けてから口を開いた。
「総長には、山南さんに就いてもらおうと思っている。異論はないな。で、問題は諸士調役兼監察だ。今、山崎が必死で動いているが、手が足りねぇ。3人くらいはこの役に就けて、山崎に少し楽させてやりてぇと思ってる。誰か、適任だと思う奴、いねぇか?」
「……島田は、どうでしょうか?」
土方にそう言ったのは斉藤だった。誰もが、その案に頷いた。
「…川島さんはどうでしょう?」
沖田の案に近藤が頷いた。しかし、2人決まったところで行き詰まってしまった。
「……………林 信太郎はいかがでしょうか。彼なら、大抵の事は器用にこなしますよ。」
葵は、今日つけた稽古で林が見せた身軽さを思い出していた。