新撰組~変えてやる!!

 「なるほど、林か!!流石、葵だな。やっぱ目の付け所がちげぇや。」

 原田が“成る程”といったように声を出した。

 「…まぁ、一応3人決まったな。よし、今夜は島原で酒宴だ。隊士達に久し振りに息抜きさせよう。それぞれ、隊士達に知らせて来い。おっと、小宮は残れよ。よし、解散!!」

 土方の言葉に原田達はばらばらに散っていった。

 「小宮、部屋のことだがな、この部屋の隣か、斉藤の部屋の隣かのどっちかしか開いてないんだ。どっちにする?」

 「…一の隣の部屋でお願いします。その方が丞の部屋に近いですから。」

 葵はニッと笑った。

 「そうか。なら、後で案内する。しばらくそこに座っていろ。」

 土方はそう言い、紙と筆を取り出してさらさらと文字を書き始めた。時々近藤や山南と相談しながら書き進めていた。

 「…よし。これが最終決定でいいな。今夜にこれを発表するぞ。いいな?」

 土方の言葉に山南と近藤が頷いた。土方は紙を近藤に渡し、葵に近付いてきた。

 「…案内してやる。ついて来い。」

 葵は無言で立ち上がり、山南と近藤に少し頭を下げてから土方に続いて出た。



 「……副長…後悔、してませんか?」

 土方は怪訝そうに葵を見た。

 「…迷ってるような顔、してますよ。あなたのことですから、“女に刀を持たせたのが間違いだった。”とか、考えているんでしょうけど。私は、刀を取って戦っていること、後悔してませんよ。むしろ感謝してます。今までは、人を信じようなんて、思いませんでした。けど、私は……ここでなら、まだ信じられる。信じたい。だから、これだけは言っておきます。ここでは、女だからとかそんなの関係なく、信念を持ったひとりの人間として扱ってください。」

 土方の足が止まった。悲痛に表情を浮かべる土方は本来あるべき“副長”の姿を見失っていた。

 「信じますよ。あなた達を…たとえ、未来の私の存在がなくなろうと、“俺”があなた達の未来を変えてみせます。……なんて顔してるんですか~?その為にはしっかりと“鬼の副長”になってもらいますからね。覚悟しておいてください。」

 葵は強い視線を土方に向けた。“彼も自分も迷うことがないように”と。

 
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