新撰組~変えてやる!!
「いえ、俺は大丈夫ですよ。だから頭を上げてください。」
ガバッと音が聞こえてきそうなほど勢い良く頭を下げた2人に葵は困ったように土方を見た。
「…いやぁ…恐ろしい光景に出くわしてもぅたわ。斉藤はんが葵に刀を向け、沖田はんがそれに加勢。副長、2人には禁酒命令を出した方がええんとちゃいます?」
後ろから聞き慣れた、しかし怒気を含んだ声が聞こえたと思ったと同時にグイッと引っ張られ、そのまま肩を抱かれるような体制になった。
「そうだな。じゃあ、今月と来月の間、2人には禁酒命令を出しておく。」
土方の冷静な声は2人をシュンとさせるには十分過ぎるほどだった。この土方の言葉に2人は元気なく“はい…”と返事したのだった。
「ほんま、吃驚したで!?戻ってきたら葵が刀向けられてんねんもん。」
「そんなこと言われても…」
葵と山崎は壁にもたれかかりながら話していた。真剣な表情を崩さない山崎は端から見れば怒っているようにみえるだろう。
「…心配したんやで。」
山崎が葵の体にかぶさるような体勢になる。葵の顔の左側に添えられた手は震えていて、目の前にある顔は心配するあまりに歪んでいた。
「…ごめんなさい。」
葵の目が追い詰められたような状況になっている為に、無意識に逃げ道を探す。
「葵、ちゃんとこっち向き。謝る必要はない。俺が勝手に心配しただけや。」
山崎の開いていた方の手が葵の頬に触れ、頭を撫でる。大きく暖かい手。初めて人を殺してしまった時にも優しく包み込んでくれた手。
「……うん。…心配してくれて、ありがとう。」
葵はニッコリと笑った。今まで生きてきて、家族以外には見せたことがないであろう笑み。こんな風に他人に笑う日が来るなど、葵は思ってもみなかった。
「…………」
山崎の目が大きく見開かれ、驚愕の表情に変わる。そしてすぐに柔らかい安心したような表情になった。