新撰組~変えてやる!!
「やっと笑った…」
山崎は葵が反抗する間を与えずにギュッと葵を抱きしめた。葵は初めてのことに戸惑うばかり。
「…丞…?何が起こって…」
その時、葵の鼻を酒独特の香りがかすめた。葵の頬が赤くなる。
「…丞、酔ってる?」
「酔ってへん。葵こそ酔ってんのちゃうか?」
そう言って、山崎はさらに腕に力を込めた。葵は回された腕に安心感を覚え、自分からも山崎に擦り寄った。
“…なんか、自分じゃないみたい……酒って怖いな…”
頭の冷静な部分がそんなことを考えていたが、体が言うことを聞かないようで何時の間にか山崎の肩に頭を預けていた。山崎の体が重く葵にのしかかってきた。
「ぅ…、重……ぃ…丞…?」
山崎の腕の力が弛んだ為、山崎の体を少し押した葵は、驚きで暫くの間、声を出せなかった。
「……寝てる……やっぱり、酔ってたんじゃんか。」
山崎の規則正しい寝息に、葵は溜め息をついた。葵は山崎を器用に背中に乗せ、遊女に囲まれた土方に近寄った。
「副長、丞が寝てしまったので連れて帰ります。」
「おぉ…気ぃ付けて帰れよ。」
今度は素直に許しを出してくれた土方に軽く頭を下げ、その店を後にした。
「…明日は大変な1日になるなぁ…」
葵はしみじみと呟き、屯所への道をゆっくりと無数に輝く星を見上げながら帰った。