新撰組~変えてやる!!

•5 雫と露と梅


 葵が予想した通り、その日の屯所はバタバタと騒がしかった。

 「ほら、見回り組は行って!!源さん、頼みましたよ。ほら、沖田さんも準備してください!」

 幹部の皆が二日酔いで動けない為、葵は動ける人員を使って、臨時の見回りの組み合わせを作った。

 「まったく、情けない…」

 見回りに井上と沖田を送り出し、部屋に転がる上司であるはずの土方と近藤に吐き捨てるように言った。部屋の中には、他に原田や永倉、藤堂、斉藤がぐったりと横たわっていた。

 「葵君、少し休んではいかがですか?」

 幹部として動けるのは、今は山南だけだった。その為、葵と山南の2人で隊士達に指示を出していた。

 「助かります、総長。」

 葵は肩を回しながら言った。

 「総隊長~…、お客さんが見えていますよ~。」

 二日酔いの隊士がふらふらとした足取りで伝えてきた。葵と山南は顔を見合わせた。

 「一段落しましたから、少し休んで構いませんよ。」

 「すいません。では、一刻ほど休ませて頂きます。」

 葵は山南にペコッと頭を下げ、隊士へと近付いた。

 「客って、門の所で待たせてるの?」

 「はい。」

 隊士に手を貸しながら、葵はその場を立ち去った。そして、門へと行くと女性の姿が2つ。

 「小宮~!!」

 「雫さん!!お梅さん!!お久しぶりです。で、決まりましたか?」

 雫はいつも通りの人当たりの良い笑みを浮かべていた。

 「もちろん!!とりあえず、何個か試作品を作っといた。見るか?」

 ウキウキとした雫の様子から、よほどいい物ができたのだろう。お梅も嬉しそうに胸の前で手を合わせている。葵の返事も待たずにごそごそと風呂敷の結び目をほどき始めた。

 
< 138 / 209 >

この作品をシェア

pagetop