新撰組~変えてやる!!
屯所はまだ少し慌ただしかったが、それでも朝の慌てように比べれば随分と落ち着いていた。
「総長!!ただいま帰りました。」
葵はニッと笑った。山南は優しい笑みを葵に見せる。
「お帰り。もう休憩はいいのかね?後、半刻は時間があったのに…。」
「はい!!もう十分です。俺は、次の見回りに出られそうな隊士、捜してきます。執務の方、お願いしますね。」
葵は山南にペコッと頭を下げ、広間へと向かった。去り際に“永倉君と原田君は動けますよ~”という山南の声が聞こえた。
結局、動けそうな隊士は3人しかいなかった。葵の目の前には心配そうな表情をした山南。
「本当に大丈夫ですか?」
「総長、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ~♪左之の方にはちゃんと人数が揃ってますし、ぱっつぁんは強いですからね。」
それでも渋る山南にニッコリと笑い、とりあえず原田を見回りに行かせた。
「それでは、行って来ます。」
葵は山南の目を真っ直ぐと見た。
「…くれぐれも、気を付けるんだよ。」
心配そうに、けれどもしっかりとした目で葵を見つめかえした山南の表情は、まさに総長と呼ぶに相応しかった。
「もちろん。」
葵は左に差された2振の刀を確認して、門へと向かった。
「なぁ、葵…お前、色んなあだ名があんだな…」
「そうなの?」
いきなりの話題に葵は驚いた。
「隊士ん中じゃ結構有名らしいぞ~…“天女”とか“阿修羅”とか。それから“鬼”とか“閻魔”とか……なんか、こえぇの多いな。」
「……知らなかった…なんか、なんか…ショックだなぁ…」
葵は大きな溜め息をついた。
「…“しょっく”?なんだ、それ…」
「あ~…何でもない。こっちの話…」
永倉は聞いたこともないカタカナ語に首を傾げていたのだった。