新撰組~変えてやる!!
“…体が熱い……熱、か…?選りに選ってこんな日に…あれ?何の日だったっけ…”
葵は額に置かれたひんやりとした何かにゆっくりと目を開いた。そこには見慣れない天井が映った。
“…頭、重い……”
ズキズキと痛む頭を押さえようとして右手を包み込むものに気が付いた。けれどそれを見る気にもならず、葵はただ天井を見上げていた。
“…あぁ……そう言えば、芹沢局長は死んだんだっけ…自分が殺したんだもんね…新見副長も死んで…”
葵はそこまで考えて自分自身が恐ろしくなった。ついこの間までは普通に学校に通っていたのに、今は本物の刀を持って人を殺している。葵は目頭が熱くなるのを感じた。
“…本当に、後悔してるのは…副長じゃなくて、自分なのか…なんでこんな事になったのかなぁ…”
葵は目を閉じた。目の端の方から生温かい雫が流れ落ちた。
“…泣いてるんだ……自分が…泣くなんていつ以来だろ…”
葵はいきなり、涙を拭うように顔に触れてきた手に驚き目を開けた。
「ぅお!?な、なんや…起きとったんかいな…言うてくれや…寿命が縮まるやろ…」
葵の顔に触れていた手が驚いたように離れていった。
「…丞……?」
熱のせいか、弱く掠れた声しか出なかった。山崎は葵の体を起こし、水の入った湯呑みを渡した。葵はそれをひと口、口に含んだ。
「なんちゅう顔しとんねんな…怖い夢でも見たんか?」
そう言って頭を撫でる手は、大きく暖かかった。優しい声に葵の目から涙が次々に流れ出した。
「…どないしてんな…」
「…分かんない……」
葵は僅かに涙声になった声で答えた。山崎は葵の頭を自分の胸へと押し当てた。
「…泣き…」
「え?」
「泣いたらええ。ずっと気ぃ張ってたんやろ?今くらい、気ぃ緩めてもええ。慣れへん環境で、葵はよう頑張っとんねんや。今の内に泣いとき。」
葵は促されるままに泣き出した。出来るだけ声を押し殺していたが、それでも部屋の外には聞こえていただろう。