新撰組~変えてやる!!
「…ッ…!!……ハッ…」
葵は勢い良くカバッと布団から飛び起きた。息が荒く、全身に嫌な汗をかいていた。
「……夢…?」
葵は額に浮いた汗を拭い、大きく息を吐いた。周りを見渡すと、枕元には苦無が置いてあった。
「…丞が忘れて行ったのかな…後で渡さなきゃ。」
葵は苦無を手に取り、刃の部分を布で覆った。
新しい着物に着替え、苦無を胸元に入れた葵は、襖を開けて驚いた。
「…何…、この血…」
目の前には点々と血が落ちていた。
「小宮さん!!…良かった、今から起こそうと思っていたところです。」
葵は走ってきた沖田に視線を移し、点々と落ちている血を指差した。
「沖田さん…何ですか、これ…」
「話は後です。今は兎に角、副長室へ。急いでください!」
葵は再び走り出した沖田の後ろをついて行った。
「土方さん、連れてきました!!」
沖田はスパンと勢い良く襖を開けた。その瞬間、血の匂いが葵の鼻をかすめた。そして、目の前に広がった光景に息を飲んだ。
「…野口、さん…?…平山さん、平間さん…いったい、何が……」
「…夜、見回り中に襲われたみてぇだ…恐らく、長州の仕業だ。」
葵の問い掛けに、永倉が呟くように答えた。葵の目の前には血まみれになった野口達の姿があった。葵はペタンとその場に座り込んでしまった。
「……私……が…変えたから…?どうして、野口さん達が…?」
葵は野口の頬に触れた。そして、その冷たさに驚き、慌てて手を離した。
「……ごめんなさい…芹沢局長、新見副長…約束、守れそうにありません。」
葵は徐々にぼやけていく視界に下を向いた。その拍子にポタポタと涙が落ちた。
「……山崎、こいつを部屋に戻しとけ。落ち着いてから連れてこい。」
「承知致しました。」
山崎は葵の体を抱え上げ、土方の部屋から出て行った。