新撰組~変えてやる!!
「葵、何をそんなにムキになってんねんな…葵らしくないで?」
「うる、さ…い……私の名前、呼ぶな…これ以上、深く関わりたくない!離して!!離してよ!」
葵はボロボロと流れ落ちてくる涙を隠そうとうつむいた。葵の胸を覆うのは紛れもなく“恐怖”の感情だった。
「ぉ、おぃ…」
葵は山崎の戸惑ったような声をどこか遠くに聞いていた。そして涙を拭おうとした手は次の瞬間、山崎の行動によって止められた。
「………すす、む…?」
流れ続けていた涙は、驚きのあまりに止まっていた。ギュッと締め付けてくる山崎の腕の強さに、葵は戸惑いがちに伏せていた視線を上げた。そうすれば、バチッと山崎と視線がぶつかった。慌てて目を反らせば、さらに強い力で抱きしめられた。
「…少し、落ち着いたか?」
山崎の言葉に小さく頷けば、少しだけ腕の力が弱まった。それでも離す気はさらさらないらしく、依然として葵の体には山崎の腕が絡みついていた。葵は、顔が熱いのは昨日の熱が残っているせいだと決め付けて大きく深呼吸した。
「…丞…取り乱して、ごめん…俺、もう大丈夫だよ。…もう一度、野口さん達の所に行きたい。いいかな?」
「…わかった。行こか…」
山崎は葵の体から離れた。それからは特に会話することもなく、土方の部屋に行った。
「…お世話になりました。」
葵は大して喋ることもなかった野口、平間、平山に別れの挨拶をした。あまり関わらなかったとは言えど、仲間であった者の死は多かれ少なかれ、葵にショックを与えたのだった。
9月23日ーまだ暑さの残る風のない日だった。
その後、局長の部屋で幹部による会議が行われた。その会議では、野口ら3人の葬儀の日取りなどが着々と決められていった。葵はその場から動かず、黙々と彼らの話を聞いていたのだった。