新撰組~変えてやる!!
「…異論はないな。解散していいぞ。」
土方の言葉に、部屋からはぞろぞろと人が出て行った。葵もその場から立ち去り、道場の方へと足を向けた。
「葵、どこに行くんだ?」
葵は後ろから掛けられた声に振り向いた。そこには、竹刀片手に立っている永倉の姿があった。
「…道場。打ち合う相手が欲しい。一緒に行くか?」
「ん~…そうだな。俺も行く。」
永倉はニッと笑い、葵の横に並んだ。
道場内に竹刀で打ち合う音と荒くなった2つの息をする音が響く。互いにまっすぐ相手を見つめ合う。
“…隙がない……やっぱり、ぱっつぁんは強い…”
葵は永倉の攻撃を素早く身を翻すことでよけた。元々、自身の首があったところに鋭い突きが入った。距離を取るために一歩引けば、間髪入れずに詰め寄られる。
“…こういう試合も悪くないな…相手の1つ1つの動作に注意を払い、先の動作を予想する。”
しかし体力的な問題で葵は永倉に劣っている。それに加えてどんどんと暗くなるこの時間帯、まだこの時代の暗さに慣れきっていない。葵は永倉の重たい攻撃を受け止めながら自分の“敗北”をどこか他人事のように思っていた。
「…そろそろ止めようか。もう暗くなってきたし、葵、明日の朝は見回りだろ?」
いきなり攻撃を止めた永倉に視線を向け、葵は小さく頷いた。
「…元気ないな…どうしたんだ?野口達のこと、気にしてんのか?」
「そうだね…気にしてないって言ったら嘘になるかな。」
永倉は竹刀を片付けた。再び道場に静寂が訪れる。
「…おやすみ、ぱっつぁん…」
静寂を破り、声を出したのは葵だった。葵はそれだけ呟き、自室への道を何も考えずに歩き続けた。
「…ぁ……」
葵は着替えた拍子に、胸元から転がり落ちた苦無を拾い上げた。
「忘れてたな……また明日でいいか♪」
葵はそれを枕元に置き、浅い眠りにおちた。