新撰組~変えてやる!!
「…ッ!?………ゆ、め…?」
日の昇りきらない早朝、葵は額に浮いた汗を手で拭った。血の海に呑まれそうな感覚に陥るあの夢。
「何なんだ…」
葵はふぅ、と息を吐き出した。そして手早く着替える。葵は腰に2振りの刀を差し、浅葱色の隊服をその身に纏った。
「おはよう、朝早くからご苦労様です。さて、まだ来ていないのは楠木さんだけですね…もう少し、待ちましょうか。」
「はいっ!」
律儀に返事をしたのは浅野だった。今、この場にいるのは葵、浅野を含めて4人。その内、隊服を着ているのは葵と浅野だけ。4人もいれば、見回りに行く人数は足りている。
「そう言えば、どうしてあなた達は隊服を着ていないのですか?」
「ぇ、えっと……」
葵にいきなり視線を向けられた隊士2人は困ったように声を上げた。
「…隊服は、薄い色をしていますので、一度でも見回りに出ると、すごく汚れが目立つんです。」
「なるほど…まぁ、見回りで一人だけでも着てたら、それで十分か。」
葵は隊服の袖口に染め抜いてあるダンダラ模様を指でなぞった。
「遅れて、すいませんでした!」
葵は少し大きめの隊服をはためかせながら走ってくる楠木を微笑んで迎え入れた。
「いいですよ。…さてと、行きましょうか。」
葵は町へと足を進めた。早朝の京の風は冷たく、静かだ。昼になれば、同じ京だとは思えない程に賑わうこの町は“本当に治安が悪いのか”と疑いたくなるほどに物静かな町に見えた。
「…異変も、特にはありませんね。そろそろ帰りましょうか。朝食の時間が近付いていますから。」
“はいっ!!”と元気良く返事をする隊士達の顔をひとりひとり確認し、葵は屯所へと足を向けた。