新撰組~変えてやる!!
葵は屯所の前に佇む少年を見つけた。葵はその華奢な少年のことが気になり、隊士達を先に戻らせた。
「…君、どうしたの?迷子ですか?」
「違うよ!…その……に、入隊、希望なんですけど…」
少年は葵に顔を見上げ、恥ずかしそうに言った。
「…じゃあ、まずは名前と年齢、教えてくれる?」
少年はまん丸な目をさらに丸くした。
「…誰も、相手にしてくれなかったそのに…ありがとうございます。えっと、俺は市村 鉄之助です。年は10です。」
葵は驚いて目を丸くした。
「…そっか…市村 鉄之助、ね……よし、鉄君!!今の君じゃ、まだ入れないよ。4年後に、またおいで。君にはお兄さんがいるよね?“辰之助”さんだったかな?そのお兄さんの説得ができたら、入れてあげる。」
「…なんで、辰兄の名前………って、本当に!?辰兄の説得できたら本当に入れてくれるの!?」
市村はキラキラと目を輝かせた。葵も市村の視線に合うようにしゃがみ込み、ニッコリと笑った。
「うん、入れてあげる。約束するよ。俺が死なない限り、約束は守ってあげる。さぁ、今日はもう帰りなさい。」
「総隊長~!!副長がお呼びです~!」
葵は市村の肩を軽く叩き、駆け寄ってきた隊士に視線を向けた。
「今、行きます。」
「…ぁ、あの!!」
葵はいきなり大声を出した市村に、再び視線を戻した。
「…ぁの…名前、を…」
「あぁ…小宮 葵…4年後に、また会おうね…。」
葵は市村にウインクし、颯爽とその場を去った。副長室へ向かうまでの間、葵は先程まで見ていた少年の顔を思い出していた。
市村 鉄之助<イチムラ テツノスケ>。後に土方の小姓となる少年だ。今、この時代に土方の写真が残っているのは、彼がいたからこそである。
葵は浮き足立った気持ちを抑えつつ、土方の部屋の前で声を掛けた。
「副長、小宮です…」
「……入れ。」
しばらく間を置いてから聞こえた声に、葵はゆっくりと襖開けた。