新撰組~変えてやる!!
•1 邪魔者
「…何ですか?俺、見回りから帰ってきたばっかりで、朝食もまだなんですよ?」
葵は土方の目の前に座りながら、愚痴をこぼした。
「このくれぇは大目に見ろよ…どうせ、まだ腹減ってないんだろ?」
「はいはい、わかりましたよ。…で、話とは?」
葵は呆れたように苦笑いした。つられて土方も苦笑いになる。
「それが副長に対する態度かよ…まぁ、いいか…単刀直入に言おう。悪いが夜の見回りも頼む。」
「………は?もう一度、お願いします。よく聞こえなかったもので…。」
葵は目をパチクリさせた。その様子に、土方の表情がしまったというように変わった。
「…だから、その…夜の見回り、源さんが体調壊しちまったみてぇでよ…悪いが代わりに頼む。」
「……………えっと…、もう一度、夜に見回りして来い、と?」
土方は柄にもなく申し訳なさそうな表情になった。
「そういうことだ。頼めるか?」
「………着物……」
葵は不安げな表情を浮かべた土方にぽつりと呟くように声を発した。
「…な、なんだ?着物が、どうかしたのか?」
慌てふためいてしまった土方に内心笑いながら、葵は口を少し開いた。土方は葵が怒っていると思っているのか、ゴクリと息を飲む。
「…交換条件で、男物の着物を買ってくれると約束してください。それで、見回りに出ます。」
土方はポカンと大口を開けて固まってしまった。痺れを切らした葵が自嘲するような笑みを浮かべた。
「………嘘ですよ。今のは忘れて-」
「そんなんでいいのか?」
土方の言葉に、今度は葵が面食らった。
「…びびって損したぜ…“豊玉発句集”でも見せろ、とか言うかと思った…」
「…あの~…沖田さんと間違えました?俺、そこまで鬼じゃありませんよ。」
葵は頭を掻き、ふっと笑った。土方も照れたように笑った。
「じゃぁ、お露んとこに頼んでおく。その代わり、きっちり仕事しろよ!!」
「はいっ!!」
葵はご機嫌な様子で土方の部屋からスキップをしながら出て行った。それを稽古に行く隊士達が不思議そうに見ていたというのは、別のお話である。